はじめに
NSTのライバル、褥瘡回診チーム
坂総合病院の褥瘡回診チームは週1回総回診し、院内の褥瘡患者さんの治療に介入しています。褥瘡治療には栄養療法が大事なので、複数のスタッフが褥瘡委員会とNST委員会を掛け持って活躍しています。
褥瘡回診チームは背中にPUST(Pressure Ulcers Support Team)と銘打ったスクラブを着て活動しており、「いつ何時だれの挑戦でも受ける」というメッセージを掲げる好戦的集団?です。
WOCとNST専門療法士を務めます野村です。当院の褥瘡の現況はこのようになっていました。
褥瘡治療に取りかかる前に考えること
褥瘡単独の治療のみ考える場合は、高度侵襲に相当するエネルギー、タンパクを十分供給すべきです。しかし、患者さんの背景疾患は様々です。主病の治療方針が緩和ケアである場合、褥瘡の治癒を目指した栄養療法は、患者さんにとって過負荷になるかもしれません。例えば、予後が限定的と推測される癌性悪液質のかたが褥瘡を持っていた場合、褥瘡に対して杓子定規的に計算した栄養療法は、むしろ浮腫を増悪させ、QOLを損ねる可能性があります。
褥瘡における栄養療法は、背景疾患の方針に即した配慮が必要です。そういった意味では、一旦デブリードマンを施した場合、褥瘡の治癒を目指した侵襲的介入ですので、栄養療法も本気モードで行うべきです。
当院の褥瘡回診チームは、主治医に必ず方針を確認し、背景疾患を考慮した治療目標を設定するようにしています。
本気モードで治療すると決めたら
ガイドラインはこう言っている
まとめ
- 褥瘡治癒のためには、十分なエネルギーとタンパクが必要です(熱傷や重症外傷なみに…)。
- 創傷治癒過程に関わる特定栄養素を補給しましょう(ビタミン、微量元素、アルギニン、L-カルシトニン、n-3系脂肪酸、コラーゲン加水分解物など考慮)。
- 経口(経腸栄養)が最優先です。
褥瘡治療に関わる特定栄養素は、創傷治癒過程のどの時期に入れるべきか、とても大事なので、part 2で示します
最後に1点だけ。褥瘡を持つ患者さんは、初診時、長期間ほとんど食事がとれていなかった状態で来院されることがあります。このようなかたは、Refeeding症候群の高リスクですので、短期間のエネルギー充足を急がず、慎重な栄養療法を行いましょう!