経腸栄養チューブにまつわるエトセトラ

enteral feeding tube
目次

胃腸に入れられるチューブ ことはじめ

チューブの用途:排液用と栄養剤注入用

ローランドさん

世の中には、2種類のチューブがある…

日常診療で登場するチューブには、排液用と注入用がありますよね。排液用は太く、栄養剤の注入用は細く。まずこれだけは覚えましょう。

排液用に太くと言っても、鼻孔に挿入できる太さには限度があります。当院で「おとな用マーゲンゾンデ」と呼んでいる排液用のものは16Fr径です。

以前は14Fr径の通称「小児用マーゲンゾンデ」を栄養剤注入用としていましたが、国際規格へ接続口が完全移行するのに合わせ、当院では12Fr径のニプロ栄養カテーテルを栄養剤注入用として採用しました。

注入用 vs 排液用 接続口の決定的違い

栄養剤を血管内に誤注入しないよう、注入用のチューブの接続口が国際規格に変更されました。復習しておきますね。

経腸栄養用と排液用のチューブ接続の違い

栄養チューブ サイズの選びかた

当院は排液用は16Fr、栄養用の胃管は12Fr一択ですが、通称「EDチューブ」と呼ぶ十二指腸以遠にも挿入できる栄養チューブは6.5Fr~12Frまで採用しています。当院では、胃管は排液用でも注入用でも看護師さんが挿入可能ですが、必ず医師がレントゲン写真でチューブ先端の位置を確認する決まりになっています。幽門輪を越えて栄養したい場合は、医師が透視下もしくは内視鏡を利用して挿入します。胃管とEDチューブの違いを図示してみました。

胃管とEDチューブの違い

栄養剤注入に並行して嚥下訓練も行う場合は、 より細い径のチューブがお勧めです。
一方、細いチューブは注入物で詰まりやすいのが欠点です。成分栄養剤のエレンタールや、消化態栄養剤のペプタメンは詰まりにくいとされています。優先順位を天秤にかけてチューブ径や栄養剤を選びましょう。

栄養チューブ留置位置の選びかた|胃か、空腸か?

特別な理由がなければ、看護師でもベッドサイドで挿入可能である胃内留置が一般的です。幽門後への留置手技は、当院では主に外科医が依頼され透視下に行っています。外科医はイレウス菅挿入に慣れているからでしょうか。胃管から経腸栄養を開始したものの、次のような状況になっている場合、多少面倒でも幽門後への留置を考慮しなければなりません。

幽門後へチューブを留置したほうが良い場合
  • 胃内容停滞・胃排泄遅延のために栄養剤の逆流や嘔吐が多く、経腸栄養が行いにくい。
  • もともと食道裂孔ヘルニアや腹水貯留による腹圧上昇のために、逆流や嘔吐が多い。
  • 重症急性膵炎に対する早期経腸栄養開始時(膵外分泌を刺激しないよう空腸に挿入したほうが良いとする考えかたがあります)。  などなど…
上部空腸に留置されたEDチューブのレントゲン写真

経腸栄養チューブ挿入長の目安

おおまかな目安ですが、下の図を参考にしてみてください。
胃内に盲目的に入れる場合、55㎝入れば大丈夫と思われます。ただし、口腔内にタゴマルかた、気管のほうへ侵入するかたもいらっしゃいますので、盲目的挿入時は気をつけましょう。トライツ靭帯越えは透視下で行うことが多いので、長さはあまり関係ないでしょうか。

EN tube length
経腸栄養チューブ挿入長の目安

経鼻胃管挿入の極意

経鼻胃管の挿入方法を先輩から習ったことはありますか??なんとなく、鼻の穴の見た目から、頭側へ進めたい気持ちになりますが、ちがいます。先端がどうしても気管に進んでしまい、ひどく咳き込ませてしまうこともありますよね。意外とあなどれない手技です。大事な2点を強調します!

  • 挿入方向は、鼻孔から後方に向けて、まっすぐです。
  • 頭を前屈すると、気道に入りにくいです。
NGT
経鼻胃管挿入のコツ
透視下EDチューブ挿入手技です。経鼻胃管と違い、あっという間には終わりません。

栄養剤投与速度の目安

急性期の早期経腸栄養では、少量持続投与で開始するのが一般的と思われます。循環動態への影響や腹部症状がなければ、徐々に10-20ml/hrずつスピードをアップします。スピードアップのタイミングは、数時間毎、あるいは1日毎など医師によって様々です。 

胃は、原則的には、3食の食事のように間歇的に投与でき、1回量が多くても比較的耐えます。ただし、目標量に到達するまでは、徐々に増量したほうが安全でしょう。安定期には、1日3回、1時間に500ml注入しても大丈夫なかたもあります。

なお、小腸に直接注入する場合や、胃切除後のかたは、急速に注入すると下痢しますので、1日予定量終了まで一定のスピードで、ポンプを使用して持続的に投与するのが一般的です。

下図は大まかな目安であり、この数字よりも早くてOKなかた、ゆっくりしないと下痢や逆流で困るかた、いろいろですので、個別の患者さんに適した方法を見つけてください。

経腸栄養投与方法の原則

まとめ

  • 当院では胃のドレナージ用は16Fr、栄養用は12Fr以下のサイズのチューブを使用しています。
  • 排液用のチューブで経腸栄養を行わないでください。接続口でチューブの用途を区別できます。
  • 挿入方法を習得しましょう!だいたいは胃内留置で間に合いますが、幽門後投与法も知っておきましょう!
  • 経腸栄養のやりかたは、患者さんのその時の状況に適した方法で!
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