治癒過程と必要栄養素
褥瘡治療中の各時期において強化すべき栄養素のタイミング
前回のあらすじでは、ガイドライン上、エネルギー、タンパクの強化、ビタミンや微量元素も忘れずに、ということでした。
必要な栄養投与量は計算上、以下のように示されています。
ただし、これらを同時に最初からいっぺんに!というのではありません。壊死組織が付着している段階で、せっせとビタミンを補充していても治癒促進にはつながりません。
十分量のエネルギー・タンパクをベースに、肉芽を促進させるここぞという時にビタミン、微量元素を上乗せしていきましょう!
NST委員長としましては、この表が最も大事だと思いましたぞ。
条件付き必須アミノ酸(グルタミン、アルギニン)、HMB(ロイシン代謝産物)
条件付き必須アミノ酸とは、高度侵襲下などの一定条件下では、体内合成量が必要量に追いつかず、外部から積極的に摂取することが望ましいアミノ酸です。グルタミン、アルギニンは条件付き必須アミノ酸であり、創傷治癒に重要です。HMBは、タンパク合成や分解の抑制に有効で、抗炎症作用もあります。
アバンド®は、グルタミン、アルギニン、HMBに特化したONSです。
デブリードマン後の肉芽形成期に集中して使用しています。
主成分がアミノ酸のみですので、エネルギー補充には向きません。
腎機能が低下した高齢者では、アミノ酸過剰によるBUN上昇に留意しましょう。
坂総合病院での実際
栄養投与計画
傷害係数が1.0程度の疾患では、体重40kg前後のかたですと、嚥下調整食でもエネルギー、タンパクの充足が可能です。
しかし同じ体格でも、傷害係数が1.5前後の褥瘡が相手となると、これでは不足してしまいます。また、特にビタミン・微量元素の補給が必要となるのも褥瘡の栄養管理の特徴です。エネルギー・タンパクの充足や、ビタミン補給に適したONSを追加しましょう!
褥瘡治療における経口補助栄養食品(ONS)の役割
坂総合病院の食事を完食してもビタミンCが不足することがわかりましたので、ONSで補充しましょう。どれを選べばよいでしょうか。2022年時点での採用品の特徴を見てみましょう。
「特に強化したいもの」によって使い分けてみましょう。
- エネルギー・・・メイバランスミニ、マクトンオイル(中鎖脂肪酸オイルを粥に混ぜる)、ハイカロリーゼリー(嚥下障害や水分制限のかたに)
- アミノ酸・・・アバンド(グルタミン、アルギニン、HMB)、リハタイムゼリー(BCAA)、プロテインパウダー(粥に混ぜる)
- アルギニン・・・アルジネード、アイソカルゼリーArg(嚥下障害や水分制限のかたに)
- ビタミン、微量元素・・・ブイクレス、ビタミンサポートゼリー(嚥下障害や水分制限のかたに)
以下のONS一覧表は栄養ちびガイド2020にも掲載していますのでご利用ください。
症例提示
褥瘡治療の実際を動画で提示します。局所陰圧閉鎖療法も紹介しています。
まとめ
褥瘡の栄養療法は、十分なエネルギー・タンパクをベースとして、治療過程の適切な時期に、ビタミン・微量元素などの特定栄養素を補充しましょう!できればグルタミン、アルギニン、HMBも!