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誰でもわかる経腸栄養剤の選びかた

経腸栄養
目次

日本の栄養剤事情|医薬品と食品の2本立て

栄ちゃん

どーも。栄ちゃんです。初期研修医のみなさんは、栄養剤をオーダーしたいときに医薬品と食品があり、困惑するのではないでしょうか。
可能でしたら入院中は食品を、外来では医薬品をオーダーしてもらえると大人の事情では助かります。

医薬品(経腸栄養剤)食品(濃厚流動食)
法規薬事法食品衛生法
診療報酬上の取り扱い医薬品特別治療食(経管のみ)
保険適応ありなし
費用請求薬価請求給食費請求
医師の処方ありなし
管理薬剤部栄養部
新製品開発困難容易
医薬品と食品の違い

食品は新製品がどんどん発表されますが、新しい医薬品の栄養剤は、新薬の認可手続きが面倒なため、おいそれと開発されません…。うまく使いわけましょう!

栄養剤の選びかた

栄養剤選択の着眼点

NST委員長

現場では、栄養剤の用途は大雑把に次の2つです。
■まるっきり3食食事分の置き換え。
栄養剤だけで1日の必要栄養量をまかなえる、汎用性の高い栄養剤を使う。
■不足した成分を補う。
=ある成分に特化した栄養剤を食事に足す。
例:褥瘡治療にアルギニン入りサプリ。

これらの用途で栄養剤を使うと決めたら、さらにいろいろな特徴を考慮して選んでいきます。

着眼点種類・特徴条件選択
経済的理由医薬品 vs 食品入院中なら…食品を
種類(窒素源)成分栄養 or 消化態 vs 半消化態吸収不良なら…①消化態 ②成分栄養
濃度高濃度 vs 通常濃度水分を減らしたい
短時間で済ませたい
高濃度
タンパク含有量多い vs 通常急性期多いもの
形状半固形 vs 液体逆流心配
短時間で済ませたい
半固形
特徴ある成分代表例褥瘡など難治創
下痢
筋力強化
アルギニン入り
乳酸菌・食物繊維入り
BCAA入り
栄養剤選択の条件

選ぶときの思考回路…坂総合病院では

栄養のほとんどを経腸栄養でまかなう場合=汎用栄養剤

STEP
病状が急性期・重症か、否か?…急性期=タンパク必要と考える。
  • 患者さんの状態が重症(重症感染症で敗血症性ショックなど)・高度侵襲下(多発外傷、熱傷、大手術後など)と考えた場合、当院ではタンパク含有量の多い汎用栄養剤は、ペプタメンAF一択です。
  • そんなに重症でなく普通な場合(あいまいな表現でスマン)は、タンパク含有量にこだわらず、没個性で標準的な組成の汎用栄養剤を選びます。当院では、メイバランスzバッグ、ペプタメンスタンダード(食物繊維ゼロに注意)があります。*医薬品はすべて汎用性の高い標準的組成です(エンシュア、ラコール、エネーボ)。
STEP
腸の状態が悪く吸収不良や下痢が心配なら…半消化態ではないものを考慮。
  • 一般的には成分栄養よりも消化態のほうが吸収の効率が良いとされています。消化態なら、ペプタメンAF、ペプタメンスタンダード。AFは飲用に適さないので経管のみ、スタンダードは飲める、と覚えましょう。
  • なるべく便を生成させたくない場合は、医薬品扱いですが成分栄養のエレンタールが選択されます。
STEP
病状が安定したので、離床時間を長くするため、栄養剤の注入時間を短くしたい…高濃度を考慮。
  • 栄養剤の濃度は通常、1-1.5kcal/mlであることが多いですが、さらに濃度が高いものは、通常の栄養剤と比較し単位カロリーあたりの注入量が少なくできます。このため、注入時間を短くできますし、水分量の制限にもなります。当院では、MA-R(2kcal/ml)が利用できます。
STEP
胃食道逆流が気になる、もっと注入時間を短縮したい…半固形を考慮。
  • 半固形栄養剤は粘度があるため、逆流が起こりにくいこと、短時間で注入しても胃排出が遅くて下痢しにくいことがとりえです。当院では、ハイネゼリー(食品)、ラコール半固形(医薬品)が使用できます。半固形は細いチューブの通過が大変なので、当院では胃瘻(径24Fr)からの注入を原則としています。
ラコール半固形NGからはNGよ。
エネルギー・タンパクから見た経腸栄養剤早見表

エネルギー・タンパクから見ると、汎用栄養剤のうち、個性がなく標準的組成のものは、エネルギーが1kcal/1ml、タンパクが3.5g前後/100kcalであることがわかります。一方、ペプタメンAFはタンパク含有量6.0g/100kcalとぶっちぎりです。

不足する成分を補助栄養食品(ONS:Oral Nutritional Supplements)でまかなう場合

補うもの

エネルギー(食事摂取量が少ない)…お手軽にエネルギーを摂取できる飲み物、ゼリー
  • アイソカル100(200kcal/100ml、タンパク8g):これまで重宝していたメイバランスミニ(200kcal/125ml)よりもさらに少量高カロリーであり、コーンポタージュ味など味の種類が豊富なため、2022年春採用!これ単体で全エネルギーを補う使いかたはできなくはないですが、食事が出されている患者さんが無理なくエネルギーを補充する目的で主に使用します。
  • ハイカロリーゼリー:1個で150kcalとれます!水分制限中のかたに。
BCAA、ビタミンD…リハビリテーション後に
  • りはたいむゼリー(100kcal/100ml、タンパク10g):エネルギーはさほどではありませんが、BCAA2500mg、ビタミンD20μgを含み、リハビリテーション後の筋肉量・骨量アップに期待。味が栄養剤にしては、さわやか(マスカット、もも、はちみつレモン、甘夏)。
アルギニン(主に褥瘡・難治創に考慮)*炎症極期は避ける。
  • アバンド(80kcal/200ml):創傷治癒に重要な成分を多く含む(アルギニン7000mg、グルタミン7000mg、HMB1200mg)。
  • アルジネード(100kcal/125ml、タンパク5g):アルギニン2500mg含む。
  • アイソカルゼリーArg(80kcal、タンパク4g):アルギニン2500mg。水分制限中のかたに。
ビタミン(主に褥瘡・難治創に考慮)*炎症状態の配慮不要。
  • ブイクレスBio(90kcal/125ml、タンパク0.3g):ビタミン12種、ミネラル豊富、乳酸菌配合。
  • ビタミンサポートゼリー(100kcal、タンパク0g):ビタミン11種、ミネラル豊富、乳酸菌配合。食物繊維5g。
シンバイオティクス(下痢、免疫力低下)…抗菌薬長期投与などで荒れた腸内環境に腸活!
  • MEIN(200kcal/200ml、タンパク10g):ホエイペプチド、シンバイオティクス。単独で汎用栄養剤として使えます。免疫経腸栄養としても使えます。
  • ブイクレスBio(前述)
  • ビタミンサポートゼリー(前述)
免疫経腸栄養(周術期限定)
  • インパクト(110kcal/125ml、タンパク10.5g):高度侵襲術前に2-3パックを6日間飲用。アルギニン、魚油、RNAなど含む。術前の栄養貯金で術後合併症低下の報告あり。
栄養士 池本監督

ウチのホープ井上栄養士が当院採用ONSの特徴を解説します!
聞いてみてください!

坂総合病院採用ONSの特徴

まとめ

  • 経腸栄養開始の際は、入院中は食品栄養剤で始めてみてください。種類も豊富です。
  • 患者さんの状況に応じたエネルギー、タンパクの割合を考慮しましょう。
  • 食事摂取量が不十分な場合は、エネルギーの充足に主眼を置いてONSを活用しましょう。
  • 食事摂取量が十分だとしても、ONSをプラスするのが望ましいことがあります。例:褥瘡では、食事摂取しても不足しがちなビタミンやアルギニンの補充が必要です。リハビリテーション中のかたは、体づくりにBCAAやビタミンDの補充が望ましいです。
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