どーも。アントニオ★ユエキです。
輸液は初期研修医の先生が日常的にオーダーするほど身近である一方、患者さんにじかに注入されるので、一歩誤れば有害となりえるコワイ側面もあります!! 輸液の常識的知識を再確認してみましょう!!
輸液の目的
輸液は、生理食塩水や乳酸リンゲル(当院ではラクトリンゲル)などの細胞外液補充液と、ソリタT3などの維持輸液の2つに大別します。おおざっぱには、 細胞外液補充液は生命に直結するヤバい事態に使う輸液で、維持輸液はご飯の代わりです。ヤバい事態にのんきにごはんを食べている人はいませんよね。
目的 | 例 | 製剤 |
---|---|---|
細胞外液補充液 | 循環血漿量の確保 (各種ショック、手術、消化液の喪失) | 生理食塩水 ラクトリンゲルなど |
維持輸液 | エネルギー・ビタミン・微量元素の補給 | ソリタT3、KNMG3号、 ピーエヌツインなど |
その他 | 薬剤ルート確保 | 生理食塩水 5%ブドウ糖など |
細胞内外の電解質組成
からだの水分量は体重の60%であり、その割合は細胞内:細胞外=2:1です。細胞外の水分は、組織間液と血漿からなります。カリウムは細胞内に多く、ナトリウムは細胞外に多い組成になっています。このため、細胞外の水分を補う細胞外液補充液はナトリウムが多くカリウムは少ないです。一方、維持輸液は細胞内外に分布するため、細胞外液補充液よりもナトリウムが少なくカリウムは多いです。
Na mEq/L | K mEq/L | |
---|---|---|
細胞内 | 14 | 160 |
細胞外 | 140 | 4 |
細胞外液補充液の組成
種類 | Na mEq/L | K mEq/L | Cl mEq/L | 乳酸 mEq/L | 当院採用品 |
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生理食塩水 | 154 | 0 | 154 | 0 | 生理食塩水 |
乳酸加リンゲル | 130 | 4 | 109 | 28 | ラクトリンゲル |
生理食塩水はKが入っていないので、例えば素性のわからないかたの心肺停止時の蘇生でまず使用する輸液に向いています。しかし、生理食塩水の大量輸液は高クロール性代謝性アシドーシスを生じる可能性があります。その欠点を補うのが乳酸加リンゲルです。乳酸は肝や筋で代謝され重炭酸イオンとなり代謝性アシドーシスを予防します。クリティカルな高K血症さえなければ、緊急時の輸液はまず乳酸加リンゲル液で開始して差し支えないでしょう。当院では細胞外液補充液がこの2つしかないので貧弱な表となりました…。
維持輸液の組成
名称 | 糖濃度(%) | Na mEq/L | K mEq/L | Cl mEq/L | アミノ酸 | 用途 |
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ソリタT1 | 2.6 | 90 | ー | 70 | ー | 小児の開始液 |
ソリタT3 | 4.3 | 35 | 20 | 35 | ー | 4本で健常人の1日維持量 |
ビーフリード | 7.5 | 35 | 20 | 35 | + | アミノ酸入りPPN |
プラスアミノ | 7.5 | 35 | ー | 35 | + | ビーフリードのKフリー版 |
KNMG3号 | 10 | 50 | 20 | 50 | ー | TPNへつなぎ |
PNツイン1号 | 12 | 50 | 30 | 50 | + | TPN |
PNツイン2号 | 16.4 | 45 | 27 | 45 | + | TPN |
cf.ラクトリンゲル | ー | 130 | 4 | 109 | ー | 細胞外液補充液 |
維持輸液は、細胞外液補充液よりもNa濃度が低くK濃度が高い組成になっており、理論上細胞内外に分布します。ソリタT1、プラスアミノはカリウムフリーが特徴の輸液です。
輸液製剤のゆくえ
血管内に入った輸液はその後どこへいくのか図示してみますね。
- 細胞外液補充液は3対1の割合で組織間液と血漿に分布しますので、輸液された総量の4分の1が血管内に残ります。このため、出血を細胞外液補充液で補う場合、出血量の4倍入れないと同等量を補ったことにはなりません。
- 維持輸液は細胞内外に分布し、血管内には12分の1しか残りませんので、循環血漿量を補う輸液になり得ないのがわかりますね。
- ショック時に使用するヘスパンダ―や4.4%アルブミンは膠質液と呼ばれ、理論上100%が血管内に残ることになっています。