カリウムフリー輸液が必要になる場面は?
既成の輸液製剤の内容
輸液の中身のおさらいです。
細胞外液補充液は、血漿浸透圧と同等にするための塩化ナトリウムが主成分ですね。
一方、維持輸液は、塩化ナトリウムとブドウ糖が様々な割合で混合されており、それにカリウムが加えてありますね。とりあえず、ではなく栄養目的でさらに輸液を継続するなら、アミノ酸も入っていなければなりません。
体重50kgの成人を例にします。
当院では、入院後とりあえず、の維持輸液はソリタT3 500ml×1日4本が頻用されます。完全静脈栄養で高カロリー輸液を行う場合は、慣らしの前段階で末梢からビーフリード1000ml×1日2本(+脂肪製剤:イントラリポス100ml)を経て、中心静脈からピーエヌツイン1号1000ml×1日2本(+脂肪製剤:イントラリポス100ml)、以降ピーエヌツイン2号へ適宜ステップアップするのが一般的です。
しかし、以下の要因で、栄養輸液中に高カリウム血症をきたしたり、来院時からすでに高カリウム血症だった場合、既成品の輸液製剤に頼れず、自分でカリウムフリーの輸液を作成しなければなりません。
高カリウム血症の原因
カリウム負荷
・カリウム過剰摂取(輸液、輸血など)
・細胞崩壊(溶血、悪性腫瘍など)
・横紋筋融解症
細胞内からの流出
・高浸透圧症(高血糖)
・代謝性アシドーシス
・インスリン
・高張マンニトール
腎臓からの排泄障害
・腎機能障害
・高K血症性尿細管アシドーシス
・低アルドステロン症
・ARB/ACE阻害薬
カリウムフリー輸液の組み立て
カリウムフリーの輸液と言えば、生食とソリタT1がすぐに思いつきます。
しかし、生食はノンカロリーで役目は細胞外液補充液です。ソリタT1は小児の脱水治療向けの輸液なので、ナトリウム濃度が通常の栄養輸液よりも高く、ブドウ糖濃度は低い設定で、栄養輸液には向きません。
輸液製剤 | Na mEq/L | K mEq/L | 糖濃度 % | アミノ酸 g/L | エネルギー kcal/1本 |
---|---|---|---|---|---|
生理食塩水 500ml | 154 | – | 0 | – | 0 |
ソリタT1 500ml | 90 | – | 2.6 | – | 52 |
ソリタT3 500ml | 35 | 20 | 4.3 | – | 86 |
ビーフリード 1000ml | 35 | 20 | 7.5 | 30 | 420 |
カリウムフリーの栄養輸液は、基本的に塩化ナトリウム、ブドウ糖、アミノ酸の組み合わせで作れますが、その場でオーダーを考えるのはなかなか面倒であります。
アイテム | 末梢静脈栄養用 | 中心静脈栄養用 |
---|---|---|
ブドウ糖 | 5%ブドウ糖液 ➡ソリタT3の代用に使用 10%ブドウ糖液 ➡KNMG3号の代用に使用 | ハイカリックRF 当院は容量500mlを採用 ブドウ糖250g 総エネルギー1000kcal |
アミノ酸 | アミノ酸が必要な場合は プラスアミノを利用する。 | アミパレン アミノ酸20g/容量200ml |
当院は塩化ナトリウムを、20mlの規格で2種類の濃度を採用しています。
- 10%塩化ナトリウム(Na 34mEq/20ml)…薄いほう
- NaCl補正液(Na 50mEq/20ml)…濃いほう
そんなときは、ぜひNST作成のカリウムフリー輸液メニューをお使いください。
当院のみのご案内で恐縮ですが…。電子カルテには医師セットの「NST医師」をご自身のセットに入れて頂けると、カリウムフリー輸液メニューをそのままオーダーできるようになっております。高カリウム血症を見つけて、その場で一時的に輸液内容をソリタT1に変更したとしても、その後も高カリウム血症対策をしつつ栄養療法を続ける場合は、ぜひご活用ください。
当院をいつか去ったとしても、このサイトをぜひご利用ください!いつまでもわれわれは味方ですよ!