
どーも、栄ちゃんです。2021年の初稿から月日が流れ、世間では、新製品登場や物価高騰などの変化がありました。我々も世間の流れに順応し、当院採用品のラインアップを少々変えました。ある東北の病院における栄養剤の使いかたの一例としてご覧ください。


日本の栄養剤事情|医薬品と食品の2本立て
- 経腸栄養剤は、入院中は食品でオーダーすると食事代を請求できるので病院は経営上助かり、外来では医薬品をオーダーしてもらえると保険が利くので患者さんが助かります。
- 昔からある医薬品栄養剤(エンシュアやラコール)は、セレンが含まれず、食物繊維も不十分でした。新規の医薬品栄養剤(エネーボ、イノラス)にはセレンも食物繊維も含まれています。
- 在宅医療などで長期間、昔からある医薬品栄養剤をメインのエネルギー源としている患者さんは、必須微量元素(セレン、亜鉛、銅)をチェックする機会があったほうが良いかもしれません。
実践的!経腸栄養剤・経口補助栄養剤(ONS)の用途



病院で行う経腸栄養を想定し、食品栄養剤を主に解説します。
現場ではおおまかに3つの用途に分けられますね。
- 集中治療中や嚥下障害でお食事が不可能な患者さんへの食事の代替としての経管栄養。
- 食事を出していても摂取量が不足している患者さんへのエネルギーちょい足し。
- 重症患者さんへのタンパク強化(プロテインパウダー)・シンバイオティクス製剤使用、褥瘡患者さんへのアルギニン・コラーゲンペプチド補充など、特定の状況下における特定の栄養素の補充。
食事の代替としての経管栄養
消化態 vs 半消化態
- ICU入室直後や腸管浮腫の存在、長期絶食後など腸管の機能低下が心配な場合は吸収が良好とされる消化態栄養剤(窒素源がペプチド)から開始しています。消化態栄養剤は食物繊維を含まないことにご留意ください。
当院では、タンパクを多く投与したい場合はペプタメンAFを、タンパクは標準的で良い場合はネクサスを使用しています。*食物繊維を含むペプタメンプレビオを臨時採用しています(タンパクは強化されていません)。 - 腸管機能の心配が少ない場合は半消化態栄養剤(窒素源はタンパク質)を使用します。
当院では、1kcal/mlの濃度は容量200mlのメイバランス1.0、300mlのラクフィアを、2kcal/mlの濃度は容量200mlのMA-R2.0を採用しています。


200ml、300kcal、
タンパク19g。
ICU患者などの急性期向け。
高カリウム血症に注意。


200ml、300kcal、
タンパク11.4g。
食物繊維(4.2g)を含む消化態栄養剤を使用したい場合に。


200ml、300kcal、
タンパク12g。
ペプタメンAFからの移行に。


200ml、200kcal、タンパク8g。
何も心配することが無さそうなときに。


300ml、300kcal、タンパク12g。シンバイオティクス。
シールド乳酸菌、食物繊維3gを含む。塩分1.5gと多め。
エネルギー濃度
経腸栄養剤は1~1.5kcal/mlの製剤が多いですが、2kcal/mlの製剤も採用しています。高濃度の製剤は通常の濃度の製剤に比べ、同じ容量でもエネルギーを多く届けられます。また、同じエネルギー量でも通常の製剤に比べ、水分量を制限でき、投与時間の短縮にも有用です。当院は2kcal/mlのMA-R2.0を採用しています。1~1.5kcal/mlの製剤で慣らした後に切り替えて利用することが多いです。


200ml、400kcal、タンパク14.6g。
高濃度。水分量や投与量を減らしたい場合。



当院で行っている経腸栄養の実際を以下に示します。
ご参考になれば幸いです。




液体 vs 半固形
経腸栄養剤は液体の製剤がほとんどですが、粘度を高くすることで胃内に一定時間とどまることを期待した、半固形の製剤があります。栄養剤の胃食道逆流が少ないこと、下痢することなく胃瘻から短時間に注入できることが取り柄です。当院では食品のハイネックスゼリー、医薬品のイノソリッド(ラコール半固形から移行予定)を利用できます。
*投与の際は液状で胃内では半固形化される製品(ハイネックスイーゲル、マーメッドなど)がありますが、当院では需要が高くないため常備していません。


300g、300kcal、
タンパク13.5g。


300g、300kcal、
タンパク13.1g。
セレンなどの必須微量元素やカルニチンを含む。
食事摂取が進まないときのエネルギーちょい足し
なぜ食事が進まないのか、まずは原因検索が先決
摂食意欲低下の原因(原疾患の影響、電解質異常、薬剤の影響、嗜好など)を検索するのが先決で、それに対応できればベストです。
当院でよく見られる摂食不良の原因
- 原疾患の問題:疾患による嚥下障害、炎症による消耗、1次性・2次性サルコペニア
- 消化器系の問題:消化管の通過障害、腸管麻痺、吸収障害
- 歯科的問題:う蝕、義歯不適合などで咀嚼困難、口腔内乾燥
- 薬剤の問題:嚥下障害、食欲不振、悪心をきたす薬剤の使用中
- 嗜好の問題
- 先行期(認知症)の問題
それでも摂取量が不足する場合、当院NSTでは以下の対応を提案します。
少量高エネルギーのONS追加
少量でエネルギーを簡単に摂取できる液体のONSとして、アイソカル100(200kcal/100m)、すいすい(160kcal/125m)が利用できます。水分制限中であるとか、嚥下に問題がある場合は、液体よりはゼリー(ハイカロリーゼリー 150kcal/1個)やプリン(エネプリン110kcal/1個)を勧めます。


100ml、200kcal、タンパク8g。
少量で効率良くエネルギー摂取。
総じて甘い味。


125ml、160kcal、タンパク8g、すべてコラーゲンペプチド。
アセロラ、ゆず味。


60g、150kcal、
タンパク3g。


40g、110kcal、当院ではタンパク0gのものを採用、タンパク制限のかたに。MCT6g配合。みかん味。
主食にオイルやパウダー、ソースを添加する。
主食にMCTオイル(マクトンオイル)やプロテインパウダー、ごはんソースを添加する方法があります。


10gで90kcal。
かゆに混ぜて提供する。


12.5gで46kcal、タンパク10g。
かゆや副食に混ぜて提供する。


10g、60kcal、
タンパク0.2g。
ごはんにかける高エネルギーのソース。
特定の状況下で特定の栄養素の補充
エネルギー補充を主目的とせず、特定の状況下で強化したい特異的な栄養素を補充する目的で、当院では以下のONSを利用しています。
高度侵襲下のタンパクちょい足し


1包で10gの高純度ホエイプロテイン(BCAA2.9g含有)を摂取可能。
1包を50~100mlの水に溶解して使用。
難治創に対するアルギニン、コラーゲンペプチド、ビタミン補充


60g、80kcal、タンパク4g。
Arg2500mg配合。P624mgと多い。


1袋を240~300mlの水に溶解する。80kcal。創傷治癒に重要な成分を多く含む。L-Arg7000mg、L-Glu7000mg、HMB1200mg。オレンジ味。


125ml、80kcal、タンパク12g、コラーゲンペプチド10g。鉄5mg、亜鉛12mg、セレン50μg、ビタミンC500mg。ミックスフルーツ味。


125ml、160kcal、タンパク8g、すべてコラーゲンペプチド。
アセロラ、ゆず味。


78g、100kcal、タンパク0g。ビタミン11種、ミネラル豊富。シンバイオティクス:乳酸菌100億個以上、食物繊維5g、オリゴ糖1.5g配合。
筋肉・骨強化のためのBCAA、ビタミンD補充


100ml、100kcal、タンパク10g。BCAA2500mg、ビタミンD20μg。
マスカット、もも、はちみつレモン味。
プレバイオティクス、シンバイオティクス
重症患者の栄養療法ガイドライン2024では、プレバイオティクス(食物繊維、オリゴ糖)やシンバイオティクス(善玉菌+食物繊維+オリゴ糖)の利用が強い推奨となっています。抗菌薬投与中の下痢における腸管機能の回復や、長期絶食による腸管機能不全対策としての効果が期待されます。


200ml、300kcal、
タンパク11.4g。
食物繊維(4.2g)を含む消化態栄養剤を使用したい場合に。


300ml、300kcal、タンパク12g。シンバイオティクス。
シールド乳酸菌、食物繊維3gを含む。塩分1.5gと多め。


78g、100kcal、タンパク0g。ビタミン11種、ミネラル豊富。シンバイオティクス:乳酸菌100億個以上、食物繊維5g、オリゴ糖1.5g配合。


1包でビフィズス菌50億個とグァーガム分解物(水溶性食物繊維)5g摂取可能。
1包を水またはぬるま湯50~100mlに溶解する。



日本人の食事摂取基準によると、食物繊維は1日に約20gの摂取が推奨されています。通常の食品経腸栄養剤はおおむね100kcalあたり1g程度しか食物繊維が含まれていないので、1日に1200kcal頑張って入れたとて12g程度です。
食物繊維の強化にダントツなのは、ビタミンサポートゼリーやGfineですね。
病態栄養剤の立場
腎疾患
腎疾患用の栄養剤は一般的に透析を行っていない慢性腎不全患者さん用に設定されていますので、タンパク、ナトリウム、カリウム、リンが少なく設定されています。透析を行っている患者さんはむしろタンパク摂取が必要となることにご注意ください。


250ml、400kcal、タンパク14g。Na、K、Pが少ない。


250ml、400kcal、タンパク4g。Na、K、Pが少ない。


100ml、125kcal、タンパク0g。食物繊維5.5g。アップル味。


40g、110kcal、当院ではタンパク0gのものを採用、タンパク制限のかたに。MCT6g配合。みかん味。
糖尿病
世の中には血糖上昇を緩やかにすることを謳った食品の経腸栄養剤が複数ありますが、当院では需要が少なく採用しておりません。
心疾患
心疾患に特化した経腸栄養剤は2025年現在、調べ得た限り存在していないようです。十分なエネルギー、タンパクの摂取を基本として、水分や塩分を控えめにすることを考えると、経腸栄養は高濃度製剤(MA-R2.0)、ONSでは少量高カロリーのもの(アイソカル100)、水分制限できるゼリー(ハイカロリーゼリー、エネプリン)がお勧め候補になりそうです。
成分栄養剤の使い道
成分栄養は、理論上消化を必要とせず完全に吸収されるため、糞便の生成が少ないとされています。腸管の負荷を少なくする目的でクローン病における使用が代表的ですが、当院では炎症性腸疾患の患者さんに対する使用よりも、狭窄を伴う大腸癌の患者さんの術前に使用することが多いかもしれません。通常の食事の提供では大腸が閉塞する恐れがある場合に、腸管機能の維持のために少量でも経腸栄養を行っておきたいときには、低残渣であるエレンタールが選択されます。


1袋を水250mlに溶解し300kcal/300mlとする。タンパク13.2g、脂肪なし、食物繊維なし。ゼリー化し水分量を減らすことができる(水150ml)。
様々なフレーバーを利用できる。
免疫経腸栄養剤はどうしたんでせうね。
アルギニン(創傷治癒促進や免疫賦活)、グルタミン(消化管粘膜細胞や粘膜下層のリンパ球、マクロファージの主要なエネルギー源、腸内環境に有用)、n3系脂肪酸(EPA、DHA:EPAカスケードで代謝、抗炎症効果)、核酸(DNA、RNAの構成成分)などを含む免疫経腸栄養剤は、術前投与で術後感染性合併症の低減がかつて期待されていました。しかし、登場から30年を経た現在では、標準組成の栄養剤との比較検討が不十分とされ、ESPENでは大手術の周術期、少なくとも術後の推奨にとどまっています。本邦では、外科医の弛まぬ努力により低侵襲手術やERASが普及し、免疫経腸栄養剤に頼らずとも術後合併症が減少している昨今でありまして、2023年9月にIMPACTが販売停止された現在では、免疫経腸栄養剤の話題はもはや過去のものの印象です。
経腸栄養剤の互換性|食品と医薬品
退院後にご自宅で経腸栄養を継続する患者さんは、入院中には食品栄養剤を使用していた場合、退院後には処方扱いの医薬品に変更したほうが、保険が利くため食品を購入するよりも経済的負担が少ないと思われます。
通常は半消化態の医薬品栄養剤で問題ありませんが、最新のものは必須微量元素に配慮しているため、1.2kcal/mlのエネーボ(アボット)か1.6kcal/mlのイノラス(大塚)が望ましいでしょう。


まとめ
- 当院で使用している食品を中心に主な使用例をご紹介しました。
- 経腸栄養剤、ONSは用途に応じて使いわけができます。
- その時の患者さんの状態に最適な栄養剤を選んでみてください!













