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第20回宮城NST研究会の特別講演拝聴レポート|筋肉量こそが栄養のバロメーター

2025年10月4日、宮城NST研究会で拝聴した2つの特別講演の内容をレポートします。明日からの臨床に役立たせたい自分目線で拝聴していますので、一部自己解釈が過ぎていたら申し訳ございません。演者の先生お二方で共通していたのは、「筋肉量こそが栄養のバロメーターであり、疾患に関わらず予後を反映している」ことでした。

目次

特別講演Ⅰ「最適な栄養ケアのための低栄養GLIM基準」
愛知医科大学 栄養治療支援センター 特任教授 前田圭介先生

今回のご講演の内容に関連した前田先生のウェブサイトを見つけました。ぜひこちらで復習されることをお勧めします!

GLIM基準の筋肉量評価

GLIM基準の筋肉量評価は機器による測定が推奨されています。現状使用できる機器は、BIA(当院ですとInbody)、CTDXAUSが挙げられます。しかしながら、機器による測定には問題がないわけではありません。DXAはゴールドスタンダードですが状態の悪い患者さんを測定場所に連れていくのは困難であること、CT以外は浮腫の存在下で計測が不正確になる可能性があること、USは実施が簡便ですがカットオフ値が定まっていないこと、などが欠点です。機器による測定が困難な場合の代替としては、ベッドサイドで行える下腿周囲長が代表的です。当院のNST回診ではもっぱら下腿周囲長で筋肉量を評価しています。浮腫や高BMIの患者さんに対する実測値の補正方法も教わりました。

  • 下腿周囲長 異常カットオフ値
    男性< 33 cm 女性 < 32 cm
  • 下腿浮腫がある場合の補正
    男性:実測値 ー 2.0 cm 女性:実測値 ー 1.6 cm
  • 高BMIの場合の補正
    25 ≦ BMI < 30:実測値 ー 3 cm
    30 ≦ BMI < 40:実測値 ー 7 cm
    40 ≦ BMI :実測値 ー 12 cm
Ns.やちくん

筋肉量の測定に診療報酬加算が付けば急速に一般化するのではないかと想像します。住民検診で筋肉量の測定が一般化される世界をやっちーは妄想します。

栄養強化のTips

栄養強化食、ONSを利用したsip feeding、Med-Pass、食事介助の腕を磨くことによる100kcalの摂取アップ、動機付け面接介入の効果などのTipsもご紹介頂きました。

特別講演Ⅱ「最新の潮流とガイドラインから考える、重症患者の急性期栄養療法」
神戸大学医学部附属病院 救急救命科 特命准教授 中村謙介先生


ガイドラインの強い推奨3つ

日本集中治療医学会ガイドライン作成委員会より刊行された「重症患者の栄養療法ガイドライン2024」のなかで強い推奨は以下の3つとのことでした。

①腸を使える人に限って48時間以内に経腸栄養を開始する。
②シンバイオティクスを推奨する(死亡、感染性合併症の低減)。
③栄養評価を行う。

Ns.やちくん

我々が先生からのメッセージとして感じ取った点をまとめます。

これからの提言

GLIM、筋肉量評価を行う。

先生は筋肉量の評価にBIA法であるテルモのラチェッタを使用しており、間接熱量計の必要エネルギー量との相関を確認されているとのことでした。当院では高性能な機器は無いですが、評価するマインドは持っていこうと思います。

経腸栄養の利益を最大化する。

経腸栄養は行える人に行い、その利益を最大化することが重要とのことでした。経腸栄養を控えたほうが良い代表はNOMIのリスクがある循環不安定な患者さんですが、ノルアドレナリン投与量の絶対値で判断するのではなく、投与量が増加しているフェーズでは経腸栄養を控えるとのことでした。また、腸管浮腫のパラメータとしてBNP値を参考にするそうです。

Personalized nutrition therapy

ガイドラインに通り一遍に従うのではなく、患者さんの状態にアジャストすべきとのことでした。目標エネルギー量は、ICUの患者さんの80%は20 ± 5 kcal/kg/日の簡易計算で問題ないですが、肝移植などの高度侵襲では25 kcal/kg/日以上必要としたり、体重と筋肉量が解離している例は15 kcal/kg/日未満が適切であることもあり、正確には簡易熱量計で繰り返し評価することが推奨されます。
また、成分栄養、消化態、半消化態など種々の経腸栄養剤の選択も患者さんの状態による個別的な対応の一つで、先生は下痢が懸念される場合は食品の消化態栄養剤ペプチーノを使用しているそうです。

必要エネルギー、タンパクの計算に必要な体重の考え方もメモりました。
侵襲前の体重がBMI< 25 ➡ 侵襲前の体重を計算に使用
侵襲前の体重がBMI≧ 25 ➡ BMI 25の体重(理想体重)を計算に使用
侵襲前の体重が不明 ➡ 入院初日の体重を計算に使用

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