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GLIM基準を現場でどうしましょう?

令和6年6月からの診療報酬改定で、回復期リハビリテーション病棟においてGLIM基準を使用した低栄養診断が必須となり、現場では学習が進んでいます。日本栄養治療学会のホームページでもGLIM基準の詳細が示されています。

NST委員長

2024年6月に拝聴した「回復期リハビリテーション病棟協会 GLIM基準研修会」の主観的レポートです。

スクリーニング方法の推奨

GLIM基準は低栄養の診断基準であり、重症度の判定方法も示されています。使用の流れは、まず既存のスクリーニング方法で低栄養のリスクがある患者さんを抽出し、抽出されたかたにGLIM基準を使って低栄養の診断と重症度判定を行うというものです。

ここで、強調されているのが、
「スクリーニングは直ちに行ってほしい」
「妥当性のあるスクリーニング方法を用いてほしい」
ということです。

講義を拝聴した結果、ワタクシの主観的な耳には、

「スクリーニング方法は、MNA-SF、MUST、NRS-2002、MSTしか認めんよ」って言っているように天から聞こえました。
ここだけの話、TNTで栄養を学び、スクリーニング方法はSGAが代表であるかのように思っていた古い世代の私は、SGAを使っていた黒歴史を葬ろうとしています。この度日本栄腸治療学会のHPにも「GLIMにSGAは推奨しない」と明記されましたので、今後はMNA-SFを「元々使っていたけど、何か?」という顔で使用します。MNA-SFの結果「低栄養」に該当しなくても「at risk」に判定されたかたも用心ですよね…。

GLIMを使った低栄養診断の実際

目次

GLIM基準による低栄養診断のプロセス

スクリーニング方法で低栄養のリスクありに抽出されたかたのうち、表現型基準3項目中、1項目以上が該当し、かつ病因基準2項目中、1項目以上が該当した場合に低栄養と診断できます。

GLIM基準による低栄養診断のプロセス
GLIM基準による低栄養診断のプロセス(JSPENホームページから引用)

表現型とは

2018年にGLIM基準が紹介された時期には、「表現型」を「現症」と日本語訳していたと記憶していますが、今、どこを見ても「表現型」と書かれていますので、前から「表現型」って言ってたような顔して言いますね。「表現型」には「意図しない体重減少」「低BMI」「筋肉量減少」の3項目があり、1つ以上ひっかかると低栄養と診断される候補になりますが、早々に1つひっかかったとしても、そこで評価を止めずに、3つとも全て評価しないとダメだそうです。重症度判定を行う際に「表現型」のうち一番悪い項目を当てはめるためです。NSTの働き方改革を考慮すると、筋肉量の測定方法は簡便な下腿周囲長を選んじゃいますね~。

回診で簡便に実施できる下腿周囲長測定
回診で簡便に実施できる下腿周囲長測定

病因とは

病因基準で「疾病負荷/炎症」を考える際に、以前は疾患を4群に分けて紹介されていた気がしますが、今回は「疾患負荷/炎症」に該当する疾患を炎症の程度で2つに分類し、炎症を伴わない疾患は「食事摂取量減少/消化吸収能低下」の項目に当てはまるであろうとの説明でした。

食事摂取量減少/消化吸収能低下に該当する例・・・炎症なし

食事摂取量減少に該当

口腔問題、薬の副作用、うつ、嚥下障害、胃腸の不調、拒食症、不適切な栄養サポート

消化吸収に悪影響を及ぼす慢性的な消化管の状態に該当

短腸症候群、膵機能不全、バリアトリック手術後、食道狭窄、胃不全麻痺、偽性腸閉塞

疾病負荷/炎症に該当する例・・・炎症あり

中~重度の急性炎症を伴う急性疾患/外傷関連低栄養

重症炎症:重症疾患、重症感染症・敗血症、ARDS、重症熱傷、腹部大手術、多発外傷、頭部外傷、重症急性膵炎
中等度炎症:慢性疾患急性増悪または中等度炎症を伴う新規発症(クローン病、リウマチ、COPD、慢性膵炎、糖尿病、感染症、創傷など)

軽~中等度の炎症を伴う慢性疾患関連低栄養

うっ血性心不全、嚢胞性線維症、COPD、クローン病、セリアック病、リウマチ、糖尿病、メタボリック症候群、悪性腫瘍、感染症(結核、AIDS)、褥瘡、歯周病、慢性腎臓病、肝硬変、軽~中等度の膵炎、臓器不全/臓器移植

重症度判定

低栄養の診断がついたら、重症度は「表現型」の項目で中等度、高度を判定します。しかし、BMIや筋肉量についてのcut off値は示されておらず、講演会では「中等度低栄養の基準値から10%程度低い値をまず設定し自施設で運用しながらその値を検証してみる方法はいかがでしょうか」と提案されていました。

課題もあるみたい・・・

炎症あり・なし?急性・慢性?迷っちゃうときは・・・

例えば大腿骨近位部骨折のかたは、手術直後は急性炎症とし、保存的治療や術後時間が経過した場合は、感染等により炎症がなければ炎症ありには該当しないそうです。誤嚥性肺炎のかたは、発熱などの炎症症状があれば急性炎症とし、発熱がなく慢性的に痰の喀出や胸水などを認める場合は慢性炎症とするそうです。低栄養の診断を行う時期によって、炎症ありとするかなしとするか、急性とするか慢性とするか、主観的に判断せざるをえない場面がありそうですね。そこはあまり深刻にならずにいきましょう!

炎症と関連する疾患の存在があれば、必ずしも判断に血液検査は必須ではないそうですが、不明確な場合の補助的指標として、CRPによる炎症重症度の判断の目安が示されています。

炎症の重症度急性疾患慢性疾患
軽度0.3~0.99 mg/dL
中等度1.0~5.0 mg/dL1.0~5.0 mg/dL
重度>5.0 mg/dL
CRPによる炎症重症度の判断の目安

GLIM基準の論文に当たりたいかたは、こちら!

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