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塩釜地区栄養サポートセミナー特別講演拝聴レポート

2023年2月6日、塩釜地区栄養サポートセミナーが開催されました。
特別講演では、熊本リハビリテーション病院で歯科衛生士としてご活躍中の白石愛先生に、「口腔ケアの実践とオーラルマネジメント、美味しく食べて元気に」という表題で1時間ご講演頂きました。白石先生は、日本臨床栄養代謝学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本サルコペニアフレイル学会など多数の学会役員を歴任され、国内外における多数の論文発表やJSPEN・ESPENでの受賞経験もお持ちのかたです。
講演内容のダイジェストを試みますが私の興味に偏った内容になっていたら御容赦ください。

目次

世界や本邦の口腔事情

世界の現状

WHOが、20年間世界の口腔衛生は何も変わっていないと発表し、世界的な口腔衛生の怠慢を終わらせる根本的な行動の時であり、早急に対策が必要で、プライマリケアに取り組まれ、全身的なものの中で捉えていくべきとの見解が示された、Lancetの論文を紹介されました。

本邦での取り組み

我が国ではすでに健康寿命における歯科の重要性が意識されておりました。骨太の方針2022では、以下のように宣言されています。

全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供。
生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討。
オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実。
歯科医療職間・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携。
歯科衛生士・歯科技工士の人材確保。
歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。
市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する。

2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」は、健康寿命の目標と、その目標を達成するための施策について定めたものです。2040年までに健康寿命を男女ともに2016年に比べて3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指しています。そのなかで、歯周病等の対策の強化として、60歳代における咀嚼良好者の割合を2022年度までに80%以上とする目標が掲げられていました。
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000514142.pdf

すでに医科と歯科が良好に連携されている熊本県の例をお示し頂きました。

口腔環境とフレイル、疾患、予後との関係

オーラルフレイルとは

オーラルフレイルとは、身体的フレイルを引き起こす要因として口腔機能の維持・向上の重要性を啓発することを目的として提案された概念であり、口腔機能の脆弱状態(フレイル)を意味する、日本オリジナルの言葉なんだそうですね。オーラルフレイルは身体的フレイルおよびサルコペニアのリスク因子であるとされています。歯の欠損やカリエス、歯周病、口腔粘膜の乾燥や感染症などは低栄養の要因となり、高齢者の口腔問題は深刻な合併症や死亡率に影響すること、急性期患者や本邦リハ高齢者や在宅高齢者に約8割は口腔問題があり、転帰に関連することが示されました。JSPENで発表されている先生の論文は以下でご覧頂けます。

白石 愛ら.高齢入院患者における口腔機能障害はサルコペニアや低栄養と関連する。
日本静脈経腸栄養学会雑誌 31(2):711-717:2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/31/2/31_711/_pdf

 

目の前の患者さんにできること

口腔の問題は重要だ!と痛いほど理解できたところで、今、非歯科職種のわれわれが目の前の患者さんにできることはきっと、口腔スクリーニング!
病棟や施設、在宅での多職種で共有可能なツールとして、ROAG(Revesed Oral Assessment Guide)による口腔スクリーニングをご紹介頂きました。スコア化による重症度評価が可能です。非歯科職種使用の信頼性と妥当性は検証済とのことです。前出のJSPENの論文にもご紹介されています。
口腔ケアに使用するジェルとして、ヒノーラをご紹介頂きました。

口腔細菌の増殖を抑えて口腔内の衛生状態を維持 ⇒ ヒノーラ(医薬部外品)
口腔乾燥のある方の唾液を補完し保湿する ⇒ヒノーラうるおいジェル(口腔化粧品)

おまけ|セミナーを終えて

わがNSTは2005年の発足以降、入院中の栄養管理はかなり成熟したと自負していますが、今後は退院後や病気になる前の段階でも活躍したいところです。口腔の問題へ取り組むこともその一つです。今回のセミナーで刺激を受け、自分らの現状把握と課題の整理ができました。

妄想は尽きませんが、まずは目の前の課題として、以下3つを当面の目標にしたいと思います。

①口腔スクリーングによるリスク評価の文化の定着 まずNST回診で始めてみる??
②歯科が必要とする情報を網羅した紹介状のテンプレートを作成し、全医師が臆せず歯科と連携できるようにする。
③そのためにはまず歯科医師会にご挨拶に伺う。


大塚製薬工場の皆さま、本セミナーをご企画くださいましてありがとうございました。

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