NST薬剤師の視点から、病棟で気を付けたい、薬にまつわる注意点をご紹介しますね。
ワーファリンと高カロリー輸液用総合ビタミン剤
ワーファリンはビタミンKの摂取で効果が減弱し、250μg/日以上の摂取でPT-INRが0.5-0.7延長するとされています。
みなさんご存知の、ワーファリン服用中に食べちゃダメな代表、納豆は1パック(40g)中240μgです。
病院では、ビタミンKを含む薬剤に注意しなければなりません。栄養療法に関連するものとして、高カロリー輸液用総合ビタミン剤に留意しましょう。当院採用のマルタミンは1瓶中、ビタミンKを2000μg含みます。ワーファリンを服用中に、マルタミンをしっかり含む中心静脈栄養を開始する場合には、効果減弱に注意ですよ。反対に中心静脈栄養終了後の効果増強にもご注意ください。
ビタミン剤 | 末梢用 | 中心静脈用 |
---|---|---|
当院採用品 | サブビタン | マルタミン |
ビタミン | 水溶性のみ | 水溶性+脂溶性 |
B1、B2、C | 脂溶性ビタミン:D、A、K、E | |
ビタミンK | ー | 2000μg |
脂肪乳剤も、原料のダイズ油に由来するビタミンK1がワーファリンの作用に拮抗するため、作用減弱の恐れありとされています。
薬剤投与で塩も摂取⁉
薬剤の溶解に頻用される生理食塩液100mlは0.9%NaClであり、1本につき0.9gの塩分摂取となります。これが1日3回入ると、食事以外に2.7gの塩分摂取となってしまいます。さらに抗菌薬など薬剤自体に塩分を多く含むものがありますので、塩分制限が必要な患者さんには留意しましょう。
ちなみに、食品の半固形経腸栄養剤として当院で採用しているハイネゼリーは、塩分がやや多いのが特徴です。在宅でラコール半固形を使用していた患者さんに、入院中はハイネゼリーを使用する場合、塩分が多くなりますのでご注意ください。
クスリの経管投与における注意点|酸化マグネシウムは錠剤で!センノシドは粉砕で!ランソプラゾールOD錠は水で!
簡易懸濁にすべきクスリ
内服薬を経管投与する場合、素人目には散剤が一番投与しやすいんじゃない?って思っちゃいますがそうではありません。
例えば酸化マグネシウムには錠剤と散剤がありますが、散剤は飲みやすくコーティングしている都合上溶けにくく、経管投与は詰まりやすいため不向きです。経管投与には、錠剤を55度のお湯に溶かし、簡易懸濁として投与しましょう!ちなみに55℃は施設の蛇口から出てくる温水ですよ。
粉砕にすべきクスリ
センノシドは、コーティングが固く、そのままお湯に入れてもビクともしません。粉砕して溶かしてから経管投与しましょう。
水で溶かしてほしいランソプラゾールOD錠
当院で頻用されるPPIのランソプラゾールOD錠は、添加物がお湯で固まってしまう性質があるため、水で溶かしてから経管投与しましょう。
それぞれの薬剤の特性がありますので、困ったら薬剤師に聞いてくださいね!
ポリファーマシー取り締まり強化宣言!
たくさん薬を飲んでいる+困っている状態を、ポリファーマシーと称します。入院中に薬剤の使用が増えると、機能的自立度評価表(FIM)利得や自宅退院率が有意に低かったとの報告があります。NSTの視点からは、嚥下障害をきたす可能性がある薬剤を知っておきたいですね。
摂食不良の患者さんを見かけたら、NST薬剤師の視点から、特に多剤服薬に潜む副作用の有無に注目していきたいと思います!
栄養ちびガイドでは、内服薬を経管投与する際、「簡易懸濁不可」、「粉砕不可」となる薬剤の一覧をあげています。また、「嚥下障害の原因となり得る薬剤」も示しています。ご活用ください。
いやーホント、薬剤師さんは最後の砦ですね。いつもありがとうございます。医師のみなさん、薬剤師さんの助けをお借りして医療安全に努めましょう!