岸本先生は、大阪人ならではの(東北人から見た偏見です)無意識的にかもし出されるユーモアを交えながら、普段口腔ケアを実際に行う立場にない医療者にもわかりやすく、オーラルマネジメントについて解説してくださいました。先生が発信されたキーワードをご紹介しながらレポートします。
食べていない口が意外に汚い
プラスチックの原料が石油であることと同じぐらいに意外と知られていない事実ではないでしょうか(powered by 小泉進次郎氏)。口腔は、経口摂取による唾液分泌、飲食物と歯や粘膜の摩擦、剥離上皮や汚染物の嚥下により清浄化されているそうで、歯磨きしている野生動物を誰も見たことがないのは納得です。絶食の患者さんはこの自浄性が低下しているために口腔ケアによる口腔清掃が必要となり、気管チューブが留置されるICUの患者さんは、ブラッシングと維持ケアを合わせて1日4回以上口腔ケアを実施すべきとのことでした。
口腔のバイタルサイン「清浄度」と「湿潤度」
私たちが日常診療で体温や血圧、脈拍などのバイタルサインを毎日測定するのと同様、「清浄度」と「湿潤度」は口腔のバイタルサインであり、「きれいで潤っているか」毎日観察し評価すべきです。評価の指針として岸本先生が作成された「Clinical Oral Assessment Chart ;COACH」が紹介されました。COACHは合計点数を算出して重症度を決めるものではなく、各項目(口臭、流延、口腔乾燥度・唾液、歯・義歯、粘膜)を主観的に3段階評価するものになっています。合計点数の単なる経時比較は、患者さんの口腔のどの観察項目に問題があるのかが不明瞭です。この患者さんはこの観察項目に注目して経時比較をする、といった見るべき観察項目を選んで評価を実施する使いかたもありだそうです。1日に行うべき口腔ケアの実施回数は、口腔のバイタルサインである「清浄度」と「湿潤度」を見て設定すると良いとのことです。
ちなみに歯垢の細菌数は同じ重さの便よりも多い!そうでして、私が知った今世紀最大のショッキングな事実でした。
乾いたら、負け
口腔清掃には保湿が重要であり、乾燥すると汚染物が固着し次回のケアに時間がかかります。「保湿の方程式=加湿+蒸発予防」を提示され、スプレーによる加湿、口腔ケア用ジェルを薄く塗布してマスクをする蒸発予防方法が紹介されました。また、口腔清掃のつもりがかえって菌を飛散させることがないよう、汚染物の回収も重要とのことでした。
岸本先生が執筆された、上記内容に関連したガイドライン、論文を閲覧し理解を深めましょう。